長期投資だけど、売買したけりゃ別にしてもいいと思う話

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Doc: ”Marty, I’m sorry, but the only power source capable of generating 1.21 gigawatts of electricity is a bolt of lightning.”

Marty: ”What did you say?”

Doc: ”A bolt of lighting. Unfortunately, you never know when or where it’s ever gonna strike.”


ドク「マーティ、気の毒だが、1.21ギガワットもの電力を集められるとしたら雷くらいのもんだ」
マーティ「なんだって?」
ドク「雷だよ。残念ながら、いつ、どこで雷が落ちるかなんて誰にもわからない」


映画「バックトゥ・ザ・フューチャー」より

その仮定は、ちょっとありえない

元ネタはエリスさんだか、マルキールさんだか忘れましたが、この界隈でよく聞かれる警句に「稲妻が輝く瞬間に市場に居なければいけない」的なやつがありますね。

そのこころは、「S&P500は過去何十年、年率〇%のリターンをあげてきたが、日次ベースで最もリターンが高かった10日(5日かも)を取りこぼすだけで、累積リターンは半分になる。だから余計な売買はせずに常にホールドが賢明だ」というような話だったかと思います。
(一応元の書籍は読んだはずなのですが、最早手元にはなくきちんとは覚えていません。すみません)

この話を聞くといつも不思議なんですよね。

これを言った人も、これを教訓にバイアンドホールドをする人も、「明日の市場は読めない」という前提に立っているはずです。
にもかかわらず「最高の10日」だけを取りこぼすというのは極めて非現実的な仮定です。

少なくとも「最悪の10日」を回避した場合にどうなるかを検証しなければ、フェアじゃないと思います。
完全にランダムに起こるのだとしたら、この2つは同じ確率になるはずなので。

というわけで、もともとの警句が確かなのかどうかも含め、検証してみました。

前提条件

以下の前提に基づき検証しています。
・1991年1月2日~2021年4月16日のS&P500日次リターンを基に計算(データソース
・配当は考慮しない
・それぞれの計算において、除外する日の日次リターンを0%として、累積リターンを計算
・年率化は260日で計算

データポイントは7600ほどあります。ワースト&ベスト10は以下の通りです。

ワースト10ベスト10
2020/3/16-11.98%2008/10/1311.58%
2020/3/12-9.51%2008/10/2810.79%
2008/10/15-9.03%2020/3/249.38%
2008/12/1-8.93%2020/3/139.29%
2008/9/29-8.79%2009/3/237.08%
2008/10/9-7.62%2020/4/67.03%
2020/3/9-7.60%2008/11/136.92%
1997/10/27-6.87%2008/11/246.47%
1998/8/31-6.80%2009/3/106.37%
2008/11/20-6.71%2008/11/216.32%

検証結果

まず、該当期間のS&P500の累積リターンは1182%(年率8.8%)です。

ベストの10日を除外すると、累積リターンは488%(年率5.6%)になります。どなた様かの仰る通りですね。

では、ワーストの10日を除外するとどうでしょうか?
累積リターンは2982%(年率12.3%)になります。

(1991年1月2日を100)

ちなみに、ベスト10とワースト10の20日を除外すると、累積リターンは1314%(年率9.2%)という結果になりました。元データと誤差の範囲内と言えるかと思います。

別に売買したっていいじゃない。ほどほどにね

「明日の市場は読めない」というのはその通りだと思うのですが、であれば(であるからこそ)、売買がプラスに働くのか、マイナスに働くのかは確率的にニュートラルなはずです。

大昔の誰かが行った超偏った検証結果に乗っかってバイ&ホールドするのもそれはそれで戦略だとは思いますが、もし売買することであなたの精神状態にポジティブな作用が得られるのであれば、別に機を見て売買したっていいと思います。人間だもの。

そして、ある程度データが取れたところで、自分自身の売買の結果をその時々の考えとともに振り返ってみて、リターンにプラスだったのかマイナスだったのかを検証してみればいいのです。

とはいえ、あまり頻繁な売買はおススメしません。理由は以下の通りです。

・日次リターンの期待値はプラスである(少なくとも、過去のある程度の長期間においては)
・取引コスト、税金(売却益が出る場合)が確実にネガティブに作用する

更に、上のデータを見ていただければわかる通り、下落率の大きい日と上昇率の大きい日は近接します。一般的に相場は上昇スピードより下落スピードの方が速く、上げ相場の中でベストリターンの日が生まれるケースはあまりありません。暴落の後の反発局面で起こることが多いのです。

人間の心理上、「下落を食らって狼狽売りし、その後の反発を取りこぼす」という事態は、単純な確率分布以上に頻繁に起こっている可能性があります。そのことを認識しながら、相場の下落はいつか起こりうることだと想定しながら、そうなったらどうするかをイメージしておくのがいいでしょう。

ちなみにこれを書いている筆者自身は売買は下手糞です。過去のポートフォリオ履歴をご覧いただければわかる通り、あまり投資先を入れ替えずに一応の長期投資を志向しています。

未来はわからないけれど

冒頭に引用したのは、子供のころ金ローで何度も見て大好きだった映画「バック・トゥ・ザ・フューチャー」のセリフです。
(元のセリフは英語サイトから拝借し拙訳を付けました。映画では「ジゴワット」と発音されていましたね)

映画ではこの後、未来から来たマーティの”We do now.(わかるさ)”というセリフが続きますが、残念ながらいまを生きるしかない私たちにはそれを知るすべはありません。

ただ、自身で投資先を選び、その企業の事業や経営状況をある程度でも理解しておけば、「1Qは失望売りが出そうだからちょっと減らしとこう」とか、「上方修正が出るだろうからちょっと買っとこう」みたいなことはできると思います。
私の場合は、長期目線でないとそもそも調べて理解しようという気が起きないので、ある程度の株数を持っておいて、そのうち2-3割くらいをちょこちょこ動かすイメージです。
もちろん必ずうまくいくとは限りませんが、コインを投げるよりは確率はいいのではないかと、体感的に思っています。

何にせよ、自分に合った方法の選択と、やっぱりある程度は自分で一次情報を集めて考えてみる姿勢が重要なんじゃないかと思いますね。

しかし、BTFのような、超シンプルにワクワクできる映画に最近出会えていませんねえ。年取っただけかな。

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