今期の配当であるとか、この数年の中短期的な配当維持見込みだけでお得だと思うのは早計です。なぜなら、配当とは単純な言い方で表現すると「タコが自分の足を食っている」状態だからです。
「ビジネスエリートになるための教養としての投資」奥野一成・著
(中略)
つまり大事なことは「(配当の原資でもある)利益を出し続けるほど強いのか」ということに尽きます。
世の中には様々な投資スタイルがあります。
その中で「高配当株投資」は根強い人気を持つようです。
投資に唯一絶対の正解はありませんし、各人がその目的、資産状況、性格に応じて自由に投資スタンスを選択すればいいと思います。
ただ、「高配当株投資」に関しては、一部のインフルエンサー()さんによって妙な形で持ち上げられてしまっているような気がします。
高配当株投資家が愛好する投資対象にSPYDがあります。(SPYDの何たるかはググってください)
足元ではSPYDの減配や構成企業の変更が話題になっているようですが、事実として設定来のパフォーマンスはぱっとしません。

この要因として、今はグロースのターンだからとか、小型株が足を引っ張るからだとか、頻繁なリバランスがネガティブに働いているだとか、色々な解説があるようですが、どれも本質的ではありません。
ポートフォリオに投資するときは、その中身を見ましょう。鉄則です。
SPYDの中身
直近のSPYD構成企業です。79社で構成されています。
最近比較的大規模な入れ替えが行われていますが、以下の私の主張に影響はありません。
コード | 社名 | 業種 |
ABBV | ABBVIE INC | バイオテクノロジー |
AIG | AMERICAN INTERNATIONAL GROUP | 保険 |
AIV | APARTMENT INVT & MGMT CO -A | 不動産投資信託 |
AMCR | AMCOR PLC | 容器・包装 |
AVB | AVALONBAY COMMUNITIES INC | 不動産投資信託 |
AVGO | BROADCOM INC | 半導体・半導体製造装置 |
BEN | FRANKLIN RESOURCES INC | 資本市場 |
BKR | BAKER HUGHES CO | エネルギー設備・サービス |
BXP | BOSTON PROPERTIES INC | 不動産投資信託 |
CF | CF INDUSTRIES HOLDINGS INC | 化学 |
CFG | CITIZENS FINANCIAL GROUP | 銀行 |
CMA | COMERICA INC | 銀行 |
CVX | CHEVRON CORP | 石油・ガス・消耗燃料 |
D | DOMINION ENERGY INC | 総合公益事業 |
DOW | DOW INC | 化学 |
DUK | DUKE ENERGY CORP | 電力 |
ED | CONSOLIDATED EDISON INC | 総合公益事業 |
EIX | EDISON INTERNATIONAL | 電力 |
EXC | EXELON CORP | 電力 |
FE | FIRSTENERGY CORP | 電力 |
FITB | FIFTH THIRD BANCORP | 銀行 |
FRT | FEDERAL REALTY INVS TRUST | 不動産投資信託 |
HBAN | HUNTINGTON BANCSHARES INC | 銀行 |
HBI | HANESBRANDS INC | 繊維・アパレル |
HFC | HOLLYFRONTIER CORP | 石油・ガス・消耗燃料 |
HPE | HEWLETT PACKARD ENTERPRISE | コンピュータ・周辺 |
IBM | INTL BUSINESS MACHINES CORP | 情報技術サービス |
IP | INTERNATIONAL PAPER CO | 容器・包装 |
IPG | INTERPUBLIC GROUP OF COS INC | メディア |
IRM | IRON MOUNTAIN INC | 不動産投資信託 |
IVZ | INVESCO LTD | 資本市場 |
KEY | KEYCORP | 銀行 |
KHC | KRAFT HEINZ CO/THE | 食品 |
KMI | KINDER MORGAN INC | 石油・ガス・消耗燃料 |
LEG | LEGGETT & PLATT INC | 家庭用耐久財 |
LNC | LINCOLN NATIONAL CORP | 保険 |
LUMN | CENTURYLINK INC | 各種電気通信サービス |
LYB | LYONDELLBASELL INDU-CL A | 化学 |
MET | METLIFE INC | 保険 |
MO | ALTRIA GROUP INC | タバコ |
MPC | MARATHON PETROLEUM CORP | 石油・ガス・消耗燃料 |
MTB | M & T BANK CORP | 銀行 |
NTAP | NETAPP INC | コンピュータ・周辺 |
NWL | NEWELL BRANDS INC | 家庭用耐久財 |
O | REALTY INCOME CORP | 不動産投資信託 |
OKE | ONEOK INC | 石油・ガス・消耗燃料 |
OMC | OMNICOM GROUP | メディア |
PBCT | PEOPLE’S UNITED FINANCIAL | 銀行 |
PEAK | HEALTHPEAK PROPERTIES INC | 不動産投資信託 |
PFE | PFIZER INC | 医薬品 |
PFG | PRINCIPAL FINANCIAL GROUP | 保険 |
PM | PHILIP MORRIS INTERNATIONAL | タバコ |
PNC | PNC FINANCIAL SERVICES GROUP | 銀行 |
PNW | PINNACLE WEST CAPITAL | 電力 |
PPL | PPL CORP | 電力 |
PRU | PRUDENTIAL FINANCIAL INC | 保険 |
PSA | PUBLIC STORAGE | 不動産投資信託 |
PSX | PHILLIPS 66 | 石油・ガス・消耗燃料 |
REG | REGENCY CENTERS CORP | 不動産投資信託 |
RF | REGIONS FINANCIAL CORP | 銀行 |
SLG | SL GREEN REALTY CORP | 不動産投資信託 |
SO | SOUTHERN CO/THE | 電力 |
SPG | SIMON PROPERTY GROUP INC | 不動産投資信託 |
STX | SEAGATE TECHNOLOGY | コンピュータ・周辺 |
T | AT&T INC | 各種電気通信サービス |
TFC | TRUIST FINANCIAL CORP | 銀行 |
UNM | UNUM GROUP | 保険 |
USB | US BANCORP | 銀行 |
VIAC | VIACOMCBS INC – CLASS B | メディア |
VLO | VALERO ENERGY CORP | 石油・ガス・消耗燃料 |
VNO | VORNADO REALTY TRUST | 不動産投資信託 |
VTR | VENTAS INC | 不動産投資信託 |
VZ | VERIZON COMMUNICATIONS INC | 各種電気通信サービス |
WBA | WALGREENS BOOTS ALLIANCE INC | 食品・生活必需品小売 |
WELL | WELLTOWER INC | 不動産投資信託 |
WMB | WILLIAMS COS INC | 石油・ガス・消耗燃料 |
WU | WESTERN UNION CO | 情報技術サービス |
XOM | EXXON MOBIL CORP | 石油・ガス・消耗燃料 |
XRX | XEROX HOLDINGS CORP | コンピュータ・周辺 |
不動産、エネルギー、金融、タバコなどが多いですね。
ひとまとめに論じるのはいささか乱暴ではありますが、今日の先進国において複利で利益を増やしていくことは難しそうな業種たちです。
SPYDが騰がらない理由
配当の原資は、その企業があげる当期利益です。
高配当が維持されるには、その企業が少なくとも現在と同等水準の利益を維持する必要があります。
より重要なことに、株式市場は、短期的には人気投票ですが、長期的には価値の計測器です。
長期的に株価が騰がるには、その企業の価値=フリーキャッシュフロー≒利益が増えていく必要があります。
ものすごくシンプルに言うと、構成企業の利益が増えなければ、ファンドの基準価額も騰がりません。
さて、ここで上記79社の利益の推移を見てみましょう。
Mornigstarのデータから、各社の一株あたり営業利益を計算し、単純平均しています。
「一株あたり営業利益の平均値」という指標自体に意味はありませんが、個社の影響を極力排しつつ、総体としての趨勢を見ていただければ十分だと思います。

当初2年ほどはリーマンショックからの立ち直りが見えますが、その後はほとんど横ばいです。
これでは株価が騰がらないのも当然です。
ちなみに、データは各社直近の通期決算(2019/8~2020/7)までなので、大半の企業はコロナの影響がまだ出ていません。
まとめ
高配当であるということは、足元の株価は低迷気味ということの裏返しです。
もちろん、次は「俺(高配当)のターン!」ということもありえるかもしれません。ヒストリカルにも高配当株のパフォーマンスが一時低迷後、盛り返してきたというデータはあるようです。
ただ、過去10年超の基本的には良好な相場環境の中で株価が低迷してきた会社というのは、何か理由があるはずです。
上にお示ししたチャートはその一端を物語っていると思います。
既に十分な資産を築かれ、配当という形でキャッシュインフローを得ていらっしゃる方に何か申すつもりはありません。
ただ、私と同年代以下で、これから長い目で資産を築いていこうという方が、一部の方の影響で高配当投資に飛びつくのを見ると、「ちょ、待てよ」と言いたくなってしまいます。
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