In the short run, the market is a voting machine but in the long run, it is a weighing machine.
Benjamin Graham
(市場は短期では人気投票だが、長期では価値の計測器である)
前回投稿で、SPYDに象徴される米国高配当株投資が、「長期資産形成」の観点からは得策ではないでは?と指摘しました。
その根拠は、高配当戦略の対象となりやすい企業の「価値」を表すべき「利益」が過去数年、総体としてほとんど増えていないことにあると考えています。
(参考記事:高配当株投資のワナ~SPYDが騰がらないシンプルな理由~)
では、リーマンショック後の2009年2月を大底に基本的には上昇を続けてきて、あっという間にコロナショック前の高値も回復してしまったS&P500はどうでしょうか。
いまや日本の個人投資家の投資先人気No.1に上り詰めた感もある同指数ですが、「割高だ」「バブルだ」との声も聞かれ続けて早数年という印象もあります。

S&P500構成企業の「価値」の観点から、その居所を見てみたいと思います。
S&P500の中身
言わずと知れたS&P500の中身は、米国の大型株500社です。
リストを貼り付けるとさすがに長くなりすぎるので、こちら(Wikipedia)などでご確認ください。
種類株のダブりを除くと、直近で499社だと思います。
いまをときめく会社から、ややオールドエコノミーな会社まで幅広く含まれます。
毎年3~5%程度(20社前後)は入れ替わりがあり、新陳代謝は活発です。
S&P500構成企業の「価値」の推移
前回同様、現時点の構成企業の「一株あたり営業利益の平均値」の10年分の推移です。
(新規上場や合併などで10年分のデータがない会社は、その期間は平均の計算から除いています)

2010~2012年は横ばいですが、その後は概ねコンスタントに伸びています。10年平均伸び率は10.1%、(リーマン後の回復期の影響を除く)8年平均では7.1%です。(ちなみに前回のSPYDは10年5.6%、8年1.4%でした)
もちろん、10年前とは構成企業がそれなりに違うはずです。基本的にダメな会社が弾かれて、イキのいい会社が組み入れられるので、入れ替えを考慮すると上記よりも少し低い伸び率になると思います。
米国株はバブルか?
上チャートの通り、2009年から2019年でS&P500構成企業の利益は2.6倍になっています。
その期間でS&P500指数は約4倍になっていますので、騰がりすぎかなとも思えます。
一方で、この間、米国法人税が35%から21%に下がり(株主帰属利益は2割強増)、米国長期金利は3%台から1%を切るまでに下がり、各種資産価格の上昇によって株式リスクプレミアムは低下しているはずです。
仮に株式リスクプレミアムが7%から6%になったとすると、
2.6(価値向上)×1.2(減税効果)×(3+7)/(1+6)(長期金利とリスクプレミアムの低下)=4.4倍となり、株価4倍は決して正当化されない水準ではないとも思えます。
もちろん、机上の空論にすぎません。実際の株価はこんなに単純な算数で決まっているわけではないでしょう。
ただ、大きな方向感としての居場所を確認しておくには、これくらいおおざっぱな計算でも十分かなとも思います。
あくまで”総体として”の話であり、個別の株価の高安を論じるものではありません。中身は思いっきりマチマチだと思います。
次回はそのあたりをもう少し見ていきたいと思います。
(ディスクレーマー)
私は、長期的に株価が騰がるには、あくまでその会社の企業価値≒利益が増える必要があると考えています。上記は、”ある程度の利益が出ている”ことが選定条件となるS&P500構成企業について考察したものであり、最近IPOした企業や、まして日本のマザーズ企業について「バブルではない」と論ずる根拠は持ち合わせていません。
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