(2020年4月5日、全編リライトしました)
以前書いたように、私はこれから20年、30年と積み立て投資を継続することで資産の核を作っていきたいと考えていますが、一般的に最適解と言われている世界株あるいは米国株のインデックスファンドではなく、「これは」と思うアクティブファンドで積み立てていきたいと考えています。
もちろん、手数料で毎年1%近くハンデを負うことは確実で、「アクティブファンドの8割はインデックスに勝てない」訳ですが、今後も「いつかはわからないけれど確実に訪れる」下落局面を乗り越えて、積み立てを「継続する」ということに主眼を置いたときに、「何に投資しているのか」あるいは「誰に託しているのか」は、結構重要な気がしています。
また、この「おおぶね」は、今回のコロナ・ショック相場でも発揮してくれたように下落相場に強いという特性があるように感じています。今後も私が資産を形成していく数十年の間で、恐らく何度か訪れる下落局面でもそれなりに勝ってくれるんじゃないか、というスケベ心も多少(いや、結構)持っています。
本稿では、私が「おおぶね」を選んだ理由を、所謂「5つのP」の観点からまとめておきたいと思います。
ファンドに関する情報の出典は主に下記ですが、筆者の意訳も入っているため、完全性を保証するものではありません。
・ファンド目論見書
・SBI証券のファンド紹介動画(本文中の画像は主にこのプレゼン資料から拝借)
・同、ファンドマネージャーインタビュー①、インタビュー②
・NVICのnote
「おおぶね」とは?
正式名称は、「農林中金<パートナーズ>長期厳選投資おおぶね」です。以前は「農林中金<パートナーズ>米国株式長期厳選ファンド」という名称でしたが、名称変更がありました。
どっちにしても長い名前でブロガー泣かせですね。個人的には旧名のほうがわかりやすいと思うのですが、わざわざ名称変更してくるということはそれなりの狙いがあって「おおぶね」と呼んでほしいということだと思いますので、当ブログ内での呼称も「おおぶね」で統一します。
運用会社は農林中金全共連アセットマネジメントですが、実質的には同じく農林中金グループの農林中金バリューインベストメンツ(通称:NVIC、エヌビック)が運用しているような形になるようです。
どちらも一般には馴染みのないネームですね。私は以前銀行で働いていたので農林中金自体は知っていましたが、個人向けの業務をやっているイメージがあまりなくて、このファンドを通じてこれらの会社の存在を知りました。
運用方針は「 主として米国の取引所に上場されている株式に投資する。付加価値の高い産業、圧倒的な競合優位性、長期的な潮流の3つの条件を満たす、「構造的に強靭な企業」を厳選する。原則として為替ヘッジは行わない。 」となっています。
2020年2月末時点では、米国企業26社を「厳選して」保有しており、S&P500などのインデックスはもちろん、一般的なアクティブファンドと比較しても、投資先の集中度合いに特徴のあるアクティブファンドです。
2018年の投信ブロガーが選ぶFund of the yearで19位、2019年には12位(アクティブ型では1位)となっており、一部の方からは熱い支持を受けているようです。
私自身は勝手に尊敬するろくすけさんがNVICを推していらっしゃったことで興味を持ちました。
ネット証券ではSBIと楽天証券で購入できますが、積み立て購入のみ可能です。
SBIでのみiDeCoのラインアップに入っています。積み立てNISAの対象にはなっていません(運用期間が5年に達していないことが要因だと思います)。
私は毎月、楽天証券のNISAで10万円と、SBIのiDeCoセレクトプランで1.2万円を投信に積み立てていますが、楽天証券でこのファンドが購入できるようになった2019年5月(実際の引き落としは7月分)からは、全額このファンドに投じています。
Philosophy(運用哲学)
このファンドの運用哲学であり、一番の特徴は、「売らなくていい会社しか買わない」というものです。
すなわち、以下の3つの基準を満たす「構造的に強靭な企業®」とNVICが判断した企業であれば、長期的に資本コストを上回るROICを上げ続けることができるため、継続的に企業価値が向上する。
その前提に立てば、たとえリーマンショックのようなマクロ要因や一時的な業績停滞で株価が下落することがあっても、前提が崩れていないと判断できれば、買い増すことができる。
株価は長期的には企業価値を反映するため、ある程度のスパンで見ればこれらの企業の株価は上昇し、(低迷時に買い増した分も含めて)高い絶対リターンを上げることが期待される。ということだと理解しています。
「構造的に強靭な企業®」 の条件とは・・・
①付加価値の高い産業:その企業のビジネスが世の中に必要で、人々がそれにお金を払いたいと思うような企業。
②競争優位性:相手に「この会社と戦っても仕方ないな」と思わせるほどの圧倒的な強さ、参入障壁を持つ企業。
③長期的な潮流:「世界の人口が増えていく」など、誰が見ても明らかで不可逆的な社会のトレンドを追い風にすることができる企業。

バフェット、というかフィリップ・フィッシャーの成長株投資の考え方に近いと思います。
農林中金「バリュー」インベストメンツということですが、割安株投資としての「バリュー投資」ということではなく、持続的に向上する企業の「価値」そのものに投資をするということのようですね。
NVICのCIO奥野さんも「 いくらで買うのかっていうこともそれなりに重要ですが、圧倒的に重要なのは何を買うのか」だとおっしゃっています。
強い企業を厳選して永続的に保有するバフェット型の投資というのは、株式投資をやったことがある人なら誰しも一度は憧れるものではないでしょうか。
私も個別株(日本株)を始めた当初は「永久投資するぞ」と思っていくつかの企業に投資をしたのですが、企業選択の難しさと日々のボラに翻弄されてしまい、うまくいっていません。
NVICはそれを機関投資家向けのサービスとして10年以上やっていて、実際に企業の入れ替えもほとんど起こっていないということなので、単純にすごいなーと思っています。
誰にでもできそうでいて、実は誰しもができるわけではない投資。
だからこそ託す意味があるのだと思います。
People(運用者)
運用責任者は、CIOの奥野さんです。
もともとは長銀の出身で、融資先の企業と対話しながら企業価値を上げるということをやりたかったそうで、長銀がつぶれてしまい農林中金に転じた後は、株式投資に形を変えてもともとの本懐を追求しているようです。
私もかつて金融の道を志した者として、結構共感します。
動画等で見るに、かなり個性的で尖った人物のようです。言っていることがぶれませんね。
既に削除されてしまっていますが、以前、何かのセミナーでひふみの藤野さんとパネルディスカッションした映像がアップされていました。奥野さんのぐいぐいっぷりに藤野さんがたじたじとなっていたのが印象的でした。
アクティブファンドの運用者ですから、彼くらい尖った人の方が頼もしい感じがします。
また、インタビューによれば、彼自身も個人資産をファンドに投じているそうです。
この点は賛否両論あるかもしれませんが(山崎元さんは否定されていますね)、私は運用への自信の表れとして好ましく感じます。業界全体では自分の身内には勧められないような商品ばっかり売っているわけですからね。
奥野さん以外の運用チームの顔は見えてきません。良くも悪くも彼のファンドということなのでしょう。キーマンリスクは高そうです。
Process(運用プロセス)
NVICの調査チームは、2か月に1回ほど実際に現地に足を運び、企業の経営者と面談したり、工場見学をしたり、競合企業にも訪問しながら、「構造的に強靭な企業®であるかどうか」の仮説を構築し、定期的に確認しているそうです。

そして、この点がこのファンドのもう一つの大きな特徴ですが、その面談内容を月次レポートでむちゃくちゃ詳しくレポートしてくれます。
このレポートを読むのが面白いというのが、このファンドに投資する大きな理由です。
レポートを通じて面白い米国企業やその戦略について知れるというのももちろんですが、それに対するプロの評価、その判断プロセスを垣間見れることで、自分自身の投資にとっても学びがあります。
リンク先の8月のレポートでは、新規投資先Roper technologiesについて紹介されていますが、「ソフトウェアが既存の業務プロセスを置き換えていく」というストーリーは、私の個別株長期投資枠でも重視しているテーマであり、「我が意を得たり」でした。
別記事で、過去のレポートで取り上げられている企業をまとめていますので、是非ひとつふたつ実際に読んでみてください。(参考記事:「おおぶねの月次レポートまとめ」)
海外企業の現地に足を運んで調査するという、個人投資家がやりたくてもできないことを(日本株ではこれに近いことをやってらっしゃる偉大なブロガーさんたちもいらっしゃいますが)代わりにやってくれているということだと思います。
後でも触れますが、海外株を直接調査している運用会社がそもそも少ない中、ここまで詳しくレポートしてくれるファンドは他に見当たりません。
もちろんレポートは誰でも見れるので、いいなと思うアイデアだけをパクるということもできるわけですが、私は自分のアイデアで海外個別株に投資をして十分にアルファを出す自信がつくまでは、彼らにお任せしようと思っています。
Portfolio(運用ポートフォリオ)
投資先企業は直近で26社とかなり集中しています。

VISAやDisney、3Mなんかは個人投資家にも人気の優良大企業ですね。
過去に動画やレポートなどのコンテンツで紹介されているところだと、
・Texas Instruments:アナログ半導体最大手。この会社の製品を使わないと顧客は製品開発できないレベルだそうです。
・Zoetis:動物用の薬で最大手。家族内でもペットの地位ってあがる一方ですもんね。うちの親もワンちゃんの治療に相当払ってたな・・・。
・Verisk Analytics;保険会社向け情報サービス。この会社のデータがないと保険が組成できないらしい。銀行にとってのS&PとかMoodysのデフォルト率データみたいなもんですね。
・IFF:香料大手。大企業は香料を自社開発から専門メーカーにアウトソースする流れにあるらしい。(管理人も分析記事書いてます:「おおぶね投資先ウォッチ IFF」)
・Rollins:害虫駆除大手。定期的にやんなきゃいけないですもんね。効果あるのかわかんなくても。そういうのが一番儲かるのかもしれませんね。
年次報告書で組み入れ全企業を見ることもできますが、渋い会社が多いですね。
個人的にはテックテックした会社や最近IPOした会社が含まれていないのは安心感があります。やっぱりバブルっぽかったですもんね。
Performance(運用パフォーマンス)

運用開始からまだ3年弱ですが、ここまでのパフォーマンスは上々だと思います。
個人的には2018年末と2020年2,3月の2回の下落局面でインデックスに大きく勝っているのがポイント高いです。

これは「参考」パフォーマンスとして示されているもので、「おおぶね」ではなくそのマザーファンドのリターンに相当するものだと思います(米ドル建て、手数料控除前)。機関投資家向けに運用を開始した2014年からの履歴になります。
オレンジの〇で示されているように下落局面で下げにくいというのが一つの特徴のようです。サンプルが少ないのでまさに参考程度ですが、しっかりとキャッシュフローを生んでいる企業が多いので、なんとかショックみたいな局面では相対的に下げにくいのかなと想像します。
(追記:今回のコロナ・ショックを受けて、相場下落時のパフォーマンスの強さについて検証しました。参考記事「下落相場に強いぞ!おおぶね」)
そして、集中ファンドなのでちょっと意外な感じもしますが、S&P500よりも標準偏差は低く出ています。
長期間運用して複利で増やそうというときにダウンサイドのボラは邪魔になりますので、これも有利な特徴かなと思います。
将来のパフォーマンスがどうなるかは誰にもわからないわけですが、過去10年間、基本的には続いてきた上昇相場がいつまでも続くことは考えにくいわけでして、どこかで訪れる下落局面も想定しながら積み立てを続けるには、少なくとも過去の実績からは有利な特徴を有しているといえます。
そして、それはポートフォリオ企業の定性的な特徴に裏付けられているように、私は思うのです。
Price(運用報酬)
5つのPに勝手に足しました。ファンドにかかる信託報酬についてです。
購入手数料は2%(税抜、以下同じ)上限となっていますが、ネット証券(SBI、楽天)ではノーロード設定になっているので無視します。信託財産留保額もありません。
運用報酬ですが、0.9%となっており、アクティブとしては安いと思います。
一般的に海外株アクティブは、運用会社は日本の会社でも実質的な運用は海外の運用会社に丸投げというケースが多いようです。結果的に手数料は2重に取られています。FoFでも同様です。
おおぶねはNVICが自分たちで調査しているので、調査コストはかかっているはずですが、2重取りがないのでこの水準に抑えられるということのようです。もともと機関投資家向けにやっているファンドを個人向けに出しているという点も大きいと思います。
コストを重視される方には到底許容できない水準かもしれませんが、私としてはまぁリーズナブルなところかなと思っています。
まとめ
以上、長文になりましたが、私なりの「おおぶね」評でした。
私が重視している「楽しみながら長く投資する」「しかも米国株」という点に、現時点で最もマッチするファンドだと考えています。今後も月次レポートを楽しみながら、毎月積み立てを継続したいと思います。
「投資に面白さなんて求めない」という方は、S&P500で全然かまわないと思います。ただ、今回のコロナ・ショックのような局面を経て、こういうちゃんとしたアクティブファンドがもう少し評価されるといいなとは思っておりまして、私自身は少しアツめに応援しています。
NVICさんは情報発信にも非常に積極的です。本記事で「おおぶね」に興味を持っていただけた方は、こちらに各種WEBコンテンツへのリンクをまとめていますので、是非合わせてご参照ください。
コメント