おおぶねグローバルの成功報酬が「スッゲー高い」とは思わない

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顧客に対して何を提供するか、その提供する価値に従って仕事の対価は決まるという価値観だ。商取引としては、極めて真っ当である。といっても、モノではなくサービスを提供する商売ではともすると、曖昧になりがちな点だ。

「デジタル新時代を勝ち抜く明朗経営 明豊ファシリティワークスの挑戦」 茂木俊輔著

私が毎日積み立てているアクティブファンド「おおぶねグローバル」。
このファンドの特徴の一つが運用報酬体系です。

「運用会社の取り分は成功報酬のみ」という斬新な仕組みですが、実際の受益者の負担はどの程度になるのでしょうか?

私自身は、「特別安くもないが、高いということもない」リーズナブルな水準だと思って投資をしています。
本記事ではその根拠となる私のシミュレーション結果をお示ししたいと思います。

キーワードは「フェアネス(公平さ)」です。

なお、当ファンドの概要についてはエルさんの良まとめがありますので、こちらをご覧ください。

問題意識

運用会社のNVICさんがこの報酬体系に込めた想いは公式noteで綴られていますが、成功報酬型の投資信託自体が珍しいため、結果としての報酬水準がどの程度になるのか、イメージしづらいのは事実です。

先行研究として、河童さんがファンドの情報がリリースされた早々に記事を書かれています。


河童さんがやられている計算を再現できていないので、それが正しいかどうかの検証はできていません。(私の作ったexcelで前提を揃えて計算すると、一部では異なる結果になっています)

ただ、実際にこのファンドを良いと思い、投資をしている立場からは、少なくとも前提条件が十分ではないと感じます。

これを基に「スッゲー高い」と結論付けるのは、フェアではないと感じていまして、前提条件を変えて検証してみました。

筆者の立場

フェアネスの観点から、筆者の立場を明らかにしておきます。

・私はこのファンドおよび兄弟ファンドである「おおぶね」のイチ受益者ですが、運用者であるNVICさんの投資哲学、受益者に向き合う姿勢に共感し、応援しています。まだ決してメジャーとは言えない「おおぶね」関連の記事を過去いくつか上げており、当ブログへの検索流入の相当部分が「おおぶね」関連です。このファンドの支持者が増えることは、心情的にもブログ運営上も私のメリットにつながります。

・本記事はファンドの信託報酬に関して検証するものですが、私自身は「アクティブファンドについて、運用報酬の高い安いのみで論じるのはナンセンス」だと考えています。投資哲学への共感や運用会社から発信される情報も含めてアクティブファンドの便益だと考えますし、そもそも中身が違うもの(インデックスファンドや他のアクティブファンド)との比較感で高い安いを論じることは無意味と考えるためです。
現に私は「おおぶね」シリーズには、ファンドのリターンとは別の便益を期待していますし、実際に得ています。
ただ、個人的に優良と感じるアクティブファンドの事例から、絶対水準として1%程度が妥当線なのではないかとは考えています。

先行研究への批判

シミュレーションの前提条件として、以下の点が不十分だと感じます。

・期間が短い
シミュレーションは、1年、2年、6年、8年の参照ファンドのパフォーマンスを前提に行われています。
2009年以降、世界の株式市場は基本的に右肩上がりに推移しており、上記のどの前提パフォーマンスで見ても、途中に数か月~1年程度の下落局面はありますが、比較的早期に回復しています。
しかし、このファンド含む「おおぶね」シリーズは長期投資を謳い、受益者にも長期保有してもらうことを前提に設計されています。仮に20年、30年と投資をすることを考えると、そのうち5年、10年といった期間で株式市場が低迷することも、過去の経験上は十分に起こりうるわけです。ファンドのパフォーマンスが上がらない期間は報酬を受け取らないというのが、NVICさんが考えるフェアネスなので、そういった局面も十分に含んだ期間でシミュレーションすべきと思いました。

・一括投資を前提にしている
受益者に長期保有を促す仕組みとして、「おおぶね」シリーズは積み立て購入しかできない設定になっています。受益者は基本的に毎日、毎月などの積み立てで購入しているはずなので、それを前提にシミュレーションしないと、実感とずれると思います。

前提条件

【リターン】
この3月に始まったばかりのファンドであり、トラックレコードがありません。シミュレーションの前提となるファンドリターンはどこかから借りてくるしかありません。
投資対象が日本含むグローバル株式である点、対象期間を20年以上取る観点から、以下のファンドを選択しました。
フィデリティグローバルファンド (以下、FGFと表記)
リターン期間は、1997/12/2~2020/7/31(22.7年)です。

【基本報酬】
FGFの基本報酬は1.903%、おおぶねグローバルは0.33%(ともに税込み)です。
FGFの日次のリターンを基にこの基本報酬分を調整しています。
(途中で税率が変わっているはずですが、考慮しません)

【積み立て】
毎営業日、1万円ずつ等金額で積み立てる想定です。

シミュレーション結果

まずは実際の基準価額推移です。累積で159.9%、年率4.3%です。

おおぶねGの報酬体系を適用した場合の基準価額推移です。累積で218.9%、年率5.2%となりますが、元々割高な信託報酬のファンドと比べておおぶねグローバルが安いと主張したいわけではありません。
なお、HWMというのは成功報酬が発生するかどうかのハードルのことです。過去の基準価額ピークを更新したときのみ発生する仕組みなので、オレンジの線が真横に寝ている期間は成功報酬が発生しません。

毎日1万円投資したと仮定した場合の、元本と時価評価額の推移です。
(現実的ではない想定ですが、適宜X分の1してください)

累積で55.5百万円の元本に対して、時価評価額137.6百万円、成功報酬として支払う金額の累積が9.1百万円になります。
単純法で、投資元本に対する累積リターンは147.8%(年率4.1%)、累積成功報酬率は16.4%(年率0.7%)ということになります。

特別に高いという印象にはならないと思います。

まとめ

さて、上記はあくまで仮想ですので、実際におおぶねグローバルに長期で積み立て投資をした場合に、いくらの運用報酬を負担することになるかはわかりません。

ただ、実は難しく考える必要はあまりなくて、この仕組みの元々の発想が「総リターンの10%(税込み11%)を成功報酬としてもらいますよ」というものです。

良識のある皆様であれば、先進国株式の長期期待リターンは年率5~10%程度に置いていらっしゃると思います。
仮に7%とすると、10年で2倍(+100%)、20年で4倍(+300%)です。そのうち大体10%、30%を報酬としてお支払いすると考えれば、まあそんなもんかなと私は思うのですが、いかがでしょうか。

仮にもっと高い、例えば10年で3倍(年率11.5%)とかのリターンを上げてくれれば、年率2.0%の成功報酬を支払うことになります。絶対水準としては高いと思いますが、それだけ成功しているということなので、私は許容できます。

より重要なのは、株に投資した際のリターンというのは、結構長期に渡って低迷することもありえるという事実です。そして、運用が上手くいかない期間中(上の例では22年のうち約15年!)、運用会社のNVICさんはタダ働きになるということです。

個人的には、NVICさんの運用能力を信頼しており、特に下げ相場における強さを評価していますので、仮に市場の動きがそうでも、「タダ働き期間」はもっと短くなる(=投資家もリターンを得られる)と期待して投資しています。
(関連記事:「下落相場に強いぞ!おおぶね」

「タダ働き期間」であっても、NVICさんはリターン以外のもう一つの「価値」は提供し続けてくれると思います。
それがNVICさんの考える「フェアネス」なのです。

あえて最初にリンクを張りませんでしたが、NVICさんの公式noteです。
これをこのファンドに込めた固い決意表明と取るか、単なるポエムと取るかは人によると思いますが、こういうファンドもあるんだということで、是非ご一読ください。
・NVIC公式note 「ゼロに込めた想い~受益者と同じ船に乗る~」

おまけ

それでも、フィーの高さが気になるというあなたに、こっそりおススメの買い方をお教えします。

上の図の赤丸のところで買って、緑丸のところでお売りなさい。0.3%の基本報酬のみで投資できますよ。

まあ、そんな無粋なことを考える方は、一生買わないでしょうね。それでいいのです。

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