毎月積み立てしている投資信託「農林中金<パートナーズ>長期厳選投資おおぶね(参考:農林中金<パートナーズ>長期厳選投資「おおぶね」の概要と評価)」のファンドマネージャーである奥野一成さんが個人投資家向け勉強会に登壇されました。
現地に行くことはかないませんでしたが、その様子がYoutubeで見られるということで視聴しました。
勉強会の趣旨
今回の勉強会は、「コツコツ投資家がコツコツ集まる夕べ」のスピンオフ勉強会として、投資初心者さん向けということで開催されたようです。
「コツコツ~夕べ」は、著名なファイナンシャルジャーナリストで投資初心者向けに非常にわかりやすい本(私も2冊ほど読ませていただきました)を出されている竹川美奈子さん、投資信託の専門月刊誌「投資信託事情」(すみません。読んだことありません)の編集長を務めていらっしゃる島田知保さん、老舗投信ブロガーで16年以上にわたる積み立て投資の実践をものすごくマメに情報発信されているrennyさんのお三方が主催になって、積み立て投資に取り組む個人投資家の交流の場として開催されている飲み会です。2010年から毎月、最近は隔月で開催され、累計100回以上を”コツコツと”積み重ねられているようです。
私自身はパーソナルな事情から、こういったリアルなイベントには参加しづらいのですが、投資というある意味孤独でゴールのないマラソンのような行為を続けていく中で、同じ悩みを共有できる仲間に出会えるかもしれないイベントというのは貴重な機会だと思いますし、それを恐らく手弁当で10年近く続けていらっしゃるお三方には、心から敬服します。
今回は、「投資信託で資産形成するということは、本質的にどういうことなのか」ということをテーマに、奥野さんに白羽の矢がたったようです。
非常に良い講師チョイスだと思います。完全なるポジショントークですが。
Youtubeにアップされているのは奥野さんの講演部分のみですが、主催者さんたちも交えたパネルディスカッションも行われたようです。
講演内容
奥野さんは風邪をひかれていて本調子ではなかったようですが、メッセージの強さはいつも通りです。
「投資と投機は違う。農地を買うときに重要なのはどれだけの穀物が取れるかであり、いくらで転売できるかではない。株式だけは何故か誰がいくらで買ってくれるかが重視されてしまうが、株式を買うということはその企業のオーナーになること。その会社があげる利益の一部が自分のものになる」
「企業が利益をあげられるのは、顧客や社会の問題を解決した結果。利益を上げ続ける会社は、それだけ世の中を良くしているということ」
「資本主義に参加するには3種類のやり方。ワーカーとして働くか、資本家として人を働かせるか、その両方になるか。戦後貧しかった時代は自分で働くしかなかったが、もはやそういう状況ではない。でも、日本では誰もそういうことを教えない」
⇒陰謀論臭くなってしまいますが、国(財務省?)としては、読み書きそろばんはできるけれども節税などの話を小賢しく考えない、つまり、担税能力のある真面目で”無知な”ワーカーがたくさんいる状態が好ましい。だから日本ではなんだかんだ言われつつ、結局真剣にお金教育が行われないのかな、と思いました。
「企業のオーナーになるということは、日本電産の株を買えば永守さんが、ディズニーの株を買えばミッキーマウスが自分のために働いてくれるということ。このレンズの転換が重要」
「自分の仕事はプロのファンドマネージャーとして投資家を儲けさせること。企業を応援することではない。が、結果的に世の中を良くしていると信じている」
⇒この姿勢は非常に好ましいと感じます。私自身も、「応援するために株を買う」のではなく、「儲かると思ったから株を買って、買ったからには応援する」というスタンスです。
「最も安全で効果の高い投資は自己投資。勉強に終わりはない」
「株式投資を通じて、ビジネスそのものを自分事として考えるようになれば、ビジネスパーソンとしての自分の価値も高まる。時給×時間が自分の値段ではない。自分の才能を売れ。」
「才能や生まれはアンフェア。時間は誰もが平等に持っている資産であり、これをどう味方につけるか」
「株価は、中短期的には需給や雰囲気で決まるが、長期的には企業の利益=「価値」を反映する。配当の多寡ではない」
「自分たちは利益を生み出す「構造」に投資をする。経営者や流行り廃りではない」
⇒いつもの「構造的に強靭な企業®」の3つの条件の説明とそれに当てはめた投資事例(NIKE)の紹介が続きます。投資先の選定基準がしっかりと言語化されているのは、流石だなと感じます。
投資先を考えるうえで重要な心構え:「楽して儲かる話はない」「わからないものは買わない」
投資信託を買うときに聞くべき質問:「何が入っているのですか」「誰が、どうやって運営しているのですか」「あなたはこの投信を買っていますか。どういう点が素晴らしいのですか」
⇒これ実際に販売員に聞いたら答えられる人ほぼいないんじゃないかな。特に3つ目。「同じ船に乗る。」重要だと思います。
感想
新しい話があったわけではありませんが、ぶれない奥野さんのお話を聞けてよかったです。
冒頭の「ショーシャンクの空に」は若いころに見ましたが、そういう目で見たことがなかったし、一つ一つのエピソードは忘れてしまっているので、もう一回見てみようと思いました。
投資初心者さんにとって、入り口でどんな話を聞くか、は非常に重要だと思います。
今回の企画は、私的にバイアスのかかる奥野さんはさておき、竹川さんやrennyさんなど、最初に話を聞くにはうってつけの人たちの話が聞けたのではないかと思います。とりわけ、rennyさんが強調されているとおり、「価値」について思いを馳せてみるというのは重要なことだと思います。
このような取り組みが草の根で行われていることで、この国のお金や投資にイノセントであることが変に美徳とされる風潮が、少しずつでも変わっていけばいいなと思います。
私も微力(無力?)ながら、先輩たちを見習って、コツコツと長く続けていきたいと思います。
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