先日、レオスキャピタルワークス本社で開催された「ひふみワールド」の説明会に参加してきました。
日本の投資信託の中で、最も有名で、恐らく最も人気のある「ひふみ」。
アクティブ投資家を標榜する私としては当然に意識しているファンド、運用会社ではあるのですが、私が投資を始めたのが2018年ということもあり、「ひふみ」はいまのところ投資対象にはなっていません。
ただ、その運用チームが全世界に調査範囲を広げ、世界中の成長企業を対象にしたファンドを作ったということで、大いに興味はあります。
「ひふみ」および「ひふみワールド」については色々と考えるところがあるので、別途整理して後日記事にしたいと思いますが、取り急ぎ備忘用にセミナー内容をメモしておきます。
プレゼン内容
プレゼンターは運用部の高橋氏。
ファンドのコンセプトは「世界にあふれるビックリ!を見つけにいこう」ということで、従来のひふみのコンセプトである「守りながら増やす」「顔の見える運用」などはそのままに、 「足を使って」 世界中から「面白い」成長企業を見つけてきて、受益者に紹介したいという思いがあるようです。
(各説明会共通と思われる部分は他の方もまとめてらっしゃるので、詳細はいったん割愛します)
「日本株でも中小型でもなく、『成長株』に投資をしてきたし、2017年以降、海外企業への投資実績も十分にある。あくまで今までやってきたことの延長にあるファンド」
という点を強調されていました。
海外企業訪問の事例としては、以下の例が紹介されていました(網羅できていないかもしれません)。
・スナップオン:米国の工具メーカー、工具と移動販売用のバンを用意し、フランチャイズを通じて移動販売。工具としての機能に大差はないが、自動車整備工などの顧客にとっては「憧れのブランド」であり、普通の工具ケースにスナップオンのマークを付けるだけで5倍の値段(100万円くらい(未確認)とのこと)で売れる。
・マクドナルド:ご存じマック。ミーティングルームにマックの店と同じソーダファウンテンがあり、好きなだけ飲める。マックの既存店売上高(?)は年5%で伸びており、直近の決算では5%を割っちゃったとして、失望されていた。それでも十分高いのに。海外企業の成長力は大企業になってもすごい。
・ジョリビー:フィリピン最大のフライドチキンチェーン。フィリピン人で知らない人はいない。グローバル展開も積極的であり、アメリカやベトナムのコーヒー店チェーンを買収している。新興国企業の取材も積極的にやっている。
・オリーズ:ひふみで既に投資。2%ほどの株を持つ大株主になっており、本社を訪問すると、CEO、CFO、COOなどCクラスのマネジメント層が全員出てきた。社長から直々に店舗戦略やサプライヤーの関係などじっくり聞くことができ、成長性への確信を深めた。
・テスラ(訪問したうえで投資しない企業の例として):八尾氏が訪問した際に工場が全然整備されておらず、これはダメだと判断。
・ザランド:ドイツのzozoみたいな会社。Amazonでもうまくいっていないファッションのオンライン販売に特化して非常に高い成長性。
・ジェネラックHD:米国のド田舎にある会社だが、高橋氏自身が訪問し、CEO、CFOとがっつりミーティング。家庭用の発電機を売っている会社。米国では電力会社が過少投資をしてきたせいで、少し雨が降るとすぐに停電する。当社が扱う発電機自体は何の変哲もないものだが、全米の気象データをモニタリングしており、例えばどこかの町で竜巻が起こると、そのエリアに重点的に営業をかける。当社経営陣は、アメリカで家庭用発電機の販売はまだまだ伸ばせると考えており、例えばカリフォルニアはハリケーンは来ないが、昨年の山火事の影響で大規模な停電が起こり、家庭用発電機の必要性が認識されつつある。未開の巨大市場として、ここでの伸びが期待できる。
・オリエンタル・エデュケーション:中国の英語学習塾。所得の伸びに従って親の教育熱は高まっている。日本と同様のことが中国でも起こっており、その成長ポテンシャルは日本よりもはるかに高い。
成長株に投資ということを謳っているが、「ひふみ」と同様、「守りながら増やす」ということに挑戦していくので、局面に応じてバリュー株に投資をすることもあるし、現金比率を高めることもある。
成長株といっても、西海岸のテック銘柄(GAFA的な)だけでなく、多様な「成長」を取り込んでいきたい。
質疑応答
Q.ベンチマークは何か?
A.厳密な意味でのベンチマークは設けないが、参考指数としてはMSCI AC World ex Japanと考えている。日本以外のすべての国に投資を行う可能性があるため、途上国を含めないMSCI KOKUSAIではない。
Q.出来上がりの先進国、新興国の割合イメージは?
A.割合に制約は設けていないが、派手なリスクを取るつもりはなく、新興国が過半を占めることはないと思う。ただ、いまだ新興国ではあるが世界第2位の経済大国である中国をどう見るか。中国に強気の見方をとるのであれば、新興国比率が高まる局面も想定される。モデル運用時のポートフォリオは、北米5割、アジア3割弱、欧州2割、その他若干の比率。
Q.現状10%程度のひふみの外国株割合はどうなる?
A.現状の10~15%で推移していくと想定。ひふみの外国株は大型株の代替として組み入れているものなので、日本の大型株のガバナンスが改善し、成長性に期待ができるということになれば無くなっても構わないのだが、目先数年でそれが実現することはないだろう。
Q.ひふみとの銘柄のかぶりはどの程度か?現状の銘柄数と増減イメージは?
A.運用チームとしては一体で1人のアナリストが2人のファンドマネージャーに銘柄推奨する形となるため、かぶりも普通に出てくると思う。ただ、ひふみは大型株中心で、ワールドは中小型も含めて幅広く持つという形にはなる。
運用スタート時点での銘柄数は100弱程度。今後は残高の増加とともに銘柄数が増えていくと思う。いまは直販のみで100億円上限としているが、来年頭以降は銀行チャネルでの販売もスタートする予定であり、残高が増えていくことを期待している。
Q.なぜ為替ヘッジをしないのか?
株のファンドでは為替ヘッジしないことが一般的。基準価額の変動への影響として、現地通貨ベースの株価変動の影響に対して、為替変動の影響度合いははるかに小さい。為替ヘッジをしてもリターンに意味のある影響は出ない。
Q.インド株への言及がなかったが、投資の可能性は?
A.現状、組み入れはないが、国の成長性は大変魅力的。ちょうど来月からFMの湯浅氏がインド出張を予定しており、十分な調査ができれば組み入れる可能性は大いにある。ただ、インドとロシアは外国人に投資制限がかかるため、コスト等との兼ね合いでもう少し残高が増えてから投資することになろう。
Q.実際にサービスを利用するなど、現地に拠点を置かないとわからないことも多いのではないか?
A.ご指摘の通りで現地に住んでいないとわからないことは多い。私(=高橋氏)は前職時代にNYに住んで株式アナリストをしていたことがあり、当時は肌感覚を持っていた。
例えば、 当時のFM(日本在住)がブランドのコーチを組み入れようとしていたとき、私は、「コーチは店舗もイケていないし、周りの同僚や町の女性たちはみんなマイケルコースを持っていて誰もコーチのバッグなんか持っていない」と言って組み入れに反対し、結果的に正解だった。
最近の例でいうとビヨンド・ミートなどの代替肉ブーム。アメリカに行ってふらっと入ったレストランで普通に代替肉のバーガーなどが置いてある。これは現地に行かないとわからない。
時期は未定だが、そう遠くない将来に、NY、欧州、アジアに運用部のメンバーを常駐させ、”きちんと”現地での調査をやっていきたい。
Q.コンセプトのビックリ!について、高橋氏の最近のビックリ!は?
A.海外企業を調査していると、例えばポルノ銘柄やギャンブル(カジノ)銘柄など、日本では上場が規制されるような業種に出会うことがある。これを組み入れるかというとなかなか難しいが、日本にない産業、日本が不得意な産業がたくさんあるのが面白い点。
例えば日本企業は自動車部品や電子部品は得意だが、完成品としての半導体のチップは不得意。アメリカのエヌビディアやAMDに投資をすることでその果実を得ることができる。また、LVMHやケリングなど、世界的な「ブランド」が企業として上場しているのは欧州。
ひふみワールドを通して、これらの日本に無い企業を皆さんに紹介していきたい。
Q.トラックレコードがないことで投資しづらいのだが、「ひふみ」における過去2年間の外国株への投資成績を示してもらえないか?
A.内部的には検証しており、インデックス(S&P500かMSCI AC Worldなのかは不明)には若干だが勝っていることは確認しているが、対外的にお出しできるデータはない。
Q.信託報酬(税抜き1.48%)について、高いか安いかは各受益者が判断するとして、ひふみ(同0.98%)との0.5%の差をどう考えればいいのか?
1.48%という水準は外国株に投資するアクティブファンドとしては最安水準(平均1.7%程度)を目指して設定。数年後、つみたてNISAに採用されることも目指しており、その基準となる水準(1.5%以下)も意識。
ひふみとの差でいうと、現地に企業訪問して調査することなどに相応のコストがかかっているため、その調査費用見合いということで理解してほしい。
感想
私がアクティブファンドに期待する「面白さ」という観点でいうと、世界中の「面白い」企業を実際に回って紹介してくれるという点で魅力的ではあります。
今回もマニアックな企業も含めて世界中の面白そうな企業が紹介されており、知的好奇心は刺激されました。
ただ、もう少し詳しく説明してほしいというのが正直なところ。
例えばスナップオンであれば、機能材であるはずの工具ケースに対して、(ものすごく儲かっているとは思えない)自動車整備工が通常の5倍の値段を払うという状態が何故サステナブルなのか?とか、
マクドナルドであれば、あれだけの巨大チェーンがなぜ高い既存店成長率を維持できているのか?とか、
オリーズって結局なんやねん?とか、
そういうところを知りたいと思いました。
今後出てくる運用レポートなどの内容に注目したいと思います。
他にもいくつか気になる点があるので、「ひふみ」の歴史などをもう少し調べたうえで、このファンドへの投資について改めて考えてみたいと思います。
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