先日、ひふみワールドの説明会に参加した際の感想めいたものです。
現時点でこのファンドへは投資しないつもりなのですが、このファンドが我々にどのような「価値」を届けてくれるかには興味があり、今後の運用、月次レポート等を追いかけたいと思っています。
説明会で2つの疑問を持ちました。
いずれも簡単に答えが出るものではなく、説明会の場で質問しても詮無いものなので、このファンドと運用会社であるレオスの過去と未来を見ていく中で、自分なりの考えを構築していくしかないのですが、今後の研究テーマとして、ここに記しておきたいと思います。
海外株への投資は”スタイル・ドリフト”か?
”スタイル・ドリフト”とは・・・ファンドの運用者が、当初設定した投資スタイル(バリューorグロース、大型or小型など)が相場環境に合わず有効ではなくなったと判断した場合などに、別のスタイルを取り入れることです。
確認することができるファンドのパフォーマンスはあくまで過去の成績であって、これから投資しようとする人、あるいは投資を続けようかやめようかと考える人にとって重要なのは、「パフォーマンスの再現性(=過去の高パフォーマンスが、たまたまのラッキーパンチではなく運用者の実力によるもので、それが今後も継続するか否か)」です。
ファンドの運用者にはそれぞれの得意とするスタイルがあるはずであり、スタイル・ドリフトはその連続性を断ち切る行為なので、一般的に投資家からはネガティブに捉えられます。
「ひふみ」の魅力はパフォーマンスのみでは測れないコミュニティ性の部分が多分にあり、それが多くの個人投資家の支持を集めてきたという事実はあります。一方で、パフォーマンスも高く、これらが両輪となって実質的に日本一のファンドにまで成長してきたと理解しています。
そして、後者の部分は、一般的には、”日本株”の”中小型”成長株を中心とする運用の中で高パフォーマンスを残してきたと解釈されているはずです。
昨年来の「ひふみ」での海外株への投資およびこの度の「ひふみワールド」の設定にあたって、レオスが「自分たちのスタイルは成長株への投資であり、日本株、中小型株への投資ではない」と説明していることは、「スタイル・ドリフトでは?」との批判を退ける意図だと思います。一方で、この点を強調することは、ある意味では彼ら自身もそういう批判が出かねないように見えることをやっていると自覚しているということでもあります。
一部の古参投資家さんは、これがある種の方便であることも認識したうえで、「ひふみ」への変わらぬ信頼と「ワールド」への期待を抱かれているようにも見受けられます。
そういった方々にとって、私が書いていることは、「何をいまさら。何も知らない若造が。」ということかもしれませんが、(私が若いかはどうかはさておき、)これから「ひふみ」および「ワールド」への投資を考える投資家にとっては重要だと思います。
すなわち・・・
・「ひふみ」の投資家・・・海外大型株など(良い悪いはともかく)2017年以前はなかった投資手法を取り入れるいまの運用で、過去のような高パフォーマンスが期待できるのか。また、運用部の調査リソースが「ワールド」に割かれることになるが、これが「いままでの調査活動の延長」であり、「ひふみ」の運用への悪影響なしと判断していいのか。
・「ワールド」の投資家・・・トラックレコードの無いファンドへ投資するにあたって、「レオスの調査能力は国や企業サイズに関係なく「成長株」全てに有効。なぜならそれはいままでもやってきたことだから」という説明を信じられるかどうか。
「ひふみ」のアルファの源泉は何か?
先の説明会の中で示された一つのスライド、恐らく「ひふみ」の投資家さんにとってはおなじみのチャートだと思います。

「株価=EPS×PER」
「PERは誰にも予想できないので、EPSの成長が期待できる企業に投資しましょう」
この説明は非常にわかりやすく、EPSなのか営業利益なのかという違いはあれ、私の個別株運用(の一部ですが)も基本的に同じ考え方なので、大いに首肯できます。
一方で、レオスは「守りながら増やす運用」をコンセプトとして掲げており、内需・グロース株への投資を中心としつつ、相場局面に応じて内需・外需、バリュー・グロースの比率を調整すること、場合によっては現金比率を大きく高めること、これらをダイナミックに行うことで、局面によらずボラティリティを抑えながら高いリターンを目指す運用を行っています。

相場の先行きを予想してのポートフォリオの入れ替えが完璧にできるならば、恐らく手間をかけて企業を調査、選択せずとも、指数先物の売買等で高いリターンを実現することが可能なはずです。しかし、そこは「誰にも予想できない」との立場のもと、EPS成長をアルファ(超過リターン)獲得のベースにしつつ、ボラティリティを抑制するための緩衝材として組み入れ比率の上げ下げを取り入れているのかな、と一旦は理解しました。
ただ、(まだすべての期間で見たわけではないのですが、)「ひふみ」の売買回転率は200%近くになるようです。これは、1年の間にポートフォリオの中身がそっくり入れ替わってしまうほどの売買頻度を意味します。
かなりのペースで資金流入が続いてきたファンドでもあり、アクティブファンドとしては特別高い水準ではありませんが、予想されるEPSの成長が実現するためにはそれなりの時間がかかるはずなので、それに賭けるファンドとしては高すぎるのでは?という印象を受けました。
何が言いたいかというと、仮に「ひふみ」のアルファの源泉が、企業選択(EPSの成長)のみにあらず、それなりの割合でポートフォリオ入れ替え(PERの変化に応じた売買)にあるのであれば、それはファンドマネージャーである藤野さんの”アート”の世界になると思います。
これと同じことを「ワールド」のマネージャーである湯浅氏に期待していいのか?企業選択は運用チームのノウハウとして蓄積されているとしても、湯浅氏の売買手腕は未知数です。
また、仮にポートフォリオ入れ替えも藤野氏個人のアートではなく、チームのノウハウとして共有されている場合であっても、内需・外需、バリュー・グロースという四象限分類が、収益構造もバリュエーション水準も異なるはずの海外企業を対象とする場合でも有効に機能するのでしょうか?
まとめ
さて、上に書いた疑問はいずれも「今後のパフォーマンスに期待してもいいのか?」という点に集約されます。
私がアクティブファンドに期待するのは「面白さ」ではあるのですが、パフォーマンスはどうでもいいと思っているわけではありません。運用の目的が資産の増加を通じて「家族の選択肢を増やすこと」にあるので、長期的なパフォーマンス再現に懸念があるようでは困ります。
まずはこれらの疑問に自分なりの考えを持つべく、いまは「ひふみのあゆみ」を2008年から順番に読んでいます。意味があるかはわかりません。
考えを整理してまた綴りたいと思います。
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