ESG投資なんて・・・

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まくら

三文字の言葉って、ありますよね。

心・技・体とか。

陸・海・空とか。

最近、巷では、E・S・Gなんてのが流行っているそうでございまして・・・。

 

さて、うちの2号(3歳)は現在オムツ外しに向けてトイトレの真っ最中です。

既におしっこはほぼ完ぺきにトイレでできるので、寝るとき以外は基本的にパンツにしているのですが、うんちだけはオムツでないとイヤらしく、頑なにオムツを要求してきます。

普段はパンツを履いているわけで、本人から”催し”の申告があると、あわててオムツを取りに行って履き替えさせます。

 

そんなある日の食事中・・・

2号(キョロキョロ)

私「どうした?2号」

2号「んー・・・」(モジモジ)

私「なに?ちゃんと言いな。」

2号「・・・もじ」

私「え?なに?」

2号「さんもじ」

私「さんもじ?」

2号「さいしょは・・・”う”」

私「う???」

2号「つぎは・・・”ん”」

私「う・ん?・・・・・・うんちじゃねーか!」(オムツを取りに走る)

 

普段は1号(6歳)と一緒になってうんちうんち言って喜んでいるくせに、なぜ自分のこととなると突然奥ゆかしくなるんでしょうか。

ある日の育児の一コマでした。

ESG投資とは?

本題です。

「ESG投資」という考え方があります。
財務情報だけでなく、環境(Environment)・社会(Social)・ガバナンス(Governance)の要素も考慮した投資のことです。

※GPIFホームページより

この手の投資は、もともとは20世紀前半のアメリカで、宗教上の理由からアルコールやギャンブルに関連する企業を投資対象から外す「ネガティブ・スクリーニング」として生まれました。現在でもこれらや兵器関連、たばこ、石炭火力発電などを投資対象から外している機関投資家は多いようです。

昨今ではより積極的に、企業のESG的な要素、ESG課題への取り組み状況を評価して、高評価の企業のみを選択して投資する「ポジティブ・スクリーニング」の側面が強くなっています。

このESG投資が世界的に注目されるようになっている背景には、温暖化や食糧問題など、いわゆるSDGs的な問題が世界的に強く意識されるようになったということがありますが、より直接的には、2006年に機関投資家にESG投資への取り組みを求める「国連 責任投資原則(PRI)」なるものが提唱され、世界中で主要な年金基金などがこれを採択したことで普及が進みました。

余談ですが、PRI自体は国連アナン事務総長(当時)によって提唱されたものの、現在これを直接的に推進する団体(THE PRI)は、国連とは関係ない民間団体です。

ESG投資の実際

さて、ESG投資、「世の中に悪い影響を及ぼす企業への投資をやめましょう」、あるいはより積極的に「良い影響を及ぼす企業に投資しましょう」ということなので、大変結構な話だと思います。

ただ、何をもってESG的に良いか悪いかの判断は、各投資家が自分の価値観に照らして判断するべきだと思います。

いきおいESG投資=アクティブ運用という話になるはずなのですが、PRIを採択しているような機関投資家は数兆円~数十兆円規模で運用しているわけなので、全てをアクティブファンドにお任せするというわけにはいかず、指数に連動するパッシブ投資にならざるを得ませんし、数百とか数千に及ぶ投資先の全ての企業がESG的にどうなのよということをいちいち自分たちの価値観で判断することは現実的ではありません。

ここにESG投資の矛盾があると思います。

そこで「ESG指数」なるものが登場します。グローバルにいろんなインデックスを作っているMSCIやFTSEなどの企業が、ESG的要素に基づいて各企業にスコア付けをして、一定以上のスコアを取った企業のみで構成されるインデックスを作っています。

機関投資家は、この「ESG指数」に連動するファンドに投資をするか、スコアを買ってきて企業選択の判断基準の一つとして使っているようです。

 

中学時代、クラスに一切なじめなかった根暗でひねくれ者の私としては、この時点で違和感を持ってしまうわけです。

なんかESGスコアって、学級委員長(女子)みたいじゃないですか?

「うちらみんなで最高のクラス作ろうね!」みたいな。

「そのためにルール考えといてあげたから、守ってよね。男子!」的な。

もちろんそれは善意に基づくものなのでしょうが、個々の多様で主体的な考え方が無視されていると思うのです。放っといてくれよと。そもそもみんなって誰と誰やねん、と。

 

もちろん、より主体的に、ESG的要素を考慮して投資判断をしている機関投資家もいると思います。
アクティブファンドでいえば、「いい会社」に投資をする鎌倉投信やコモンズ投信など(両社で「いい会社」の意味合いは異なりますが)は、当然にESG的要素を判断基準にしているでしょう。

でも、これらの人たちはことさらに「ESG投資」を謳っていないような気がします。そんなの当たり前でしょ、と。

事実、コモンズの伊井社長は、ESG的な要素を大事にしているとしつつ、


「僕たちESG投資じゃないよね。長期投資をやるんだからESGなんて当然の前提だよね」

というようなことをおっしゃっています。

ESG投資と私

私自身は自分の個別株運用でESG要素を強く意識しているわけではありません。
ただ、ちゃんとした企業はきちんと顧客の問題を解決して、その対価として利益を得ているはずですし(E、S)、それを最大化しつつ株主の方も見てくれる経営者であればGも十分に満たすと考えているので、きちんと利益が出る企業を選んでおけば、それは私なりのESG投資と言えるのかもしれません。
赤字企業にも投資してるので大きな顔はできませんが。

実際に保有している企業でいうと・・・
例えばJT。タバコはESG的には真っ先に嫌われる業種です。
私自身はタバコを吸いませんし、受動喫煙も大嫌いです。子供と一緒に歩いていて路上喫煙している人がいると、思わず舌打ちをしてしまいます。
でも、世の中からタバコがなくなればいいとまでは思っていません。
世知辛い世の中、真面目に納税しながらタバコ吸うくらいまぁいいじゃん、と。
(ただ、くだんの「ESGスコア」的にタバコ企業は上位に来るらしいんですが、そんなことでいいんですかね?とは思います。)

例えばムサシ。
選挙の票読み機で独占的なポジションにあるため、常に「自民党と組んで不正に票操作をしているのでは?」という陰謀論の標的にされています。
当社が不正に加担しているのか否か、私は知りませんしこの先も知る由もありませんが、常識的に考えてそんなことはないだろうとは思っています。

まぁ嫌な人は投資しなければいいのです。私たちにはどこまでも選ぶ自由があるのだから。

個人的に嫌なのは、老人を騙して・・・とは言わないまでも、情報劣位にある人たちだけを相手にしたような商売をしている企業ですかね。そういう企業は、いくら儲かっていても投資しないと思います。
倫理的に嫌なのはもちろん、その儲けはやはり持続可能ではないと思うのです。

ESG投資と私たち

さて、「そんなにESG投資が嫌いならほっとけばいいじゃん」とお思いになるかもしれませんが、そうはいかないのです。

なぜなら、日本におけるESG投資の旗振り役となっているのが、私たちの虎の子の年金を運用する、年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)だからです。

GPIFは、2017年からESG投資をかなり積極的に取り入れており、いくつかのESG指数を採用して兆円規模で投資をしています。

私は、自分が投資をするファンドに期待するものはパフォーマンスのみではありません。
「面白い!」と思わせてくれるファンドであれば、多少パフォーマンスには目をつぶっても投資したいと思っています。結果はそれを選んだ自己の責任ですし、我慢できなくなればいつでも解約すればいいやと思っています。

一方で、GPIFに期待するのは、長期でパフォーマンスを最大化していただくことのみです。
私たちから強制的にお金を集めて運用していて、嫌になったからといって解約するわけにはいかないのですから。

ここで「ESG”指数”投資のパフォーマンスはどうなのよ?」という問題に直面します。
実際にGPIFが採用している指数のリターンを見てみましょう。

 20102011201220132014201520162017累積
MSCIジャパンESGセレクトリーダーズ0.55%-20.15%22.78%57.10%9.89%14.65%-0.50%19.30%231.6%
TOPIX(配当込み)0.96%-17.00%20.86%54.41%10.27%12.06%0.31%22.23%236.9%
日経平均(配当込み)-1.49%-15.76%25.38%59.06%8.58%10.61%1.98%20.88%245.0%

※MSCI~の2018年以降のリターンを見つけられませんでした。もう1個のFTSE Blossomはなぜかファクトシートが開けませんでした。
※TOPIX配当込みのネット指数を見つけられなかったのでグロスです。日経はネットです。
※小数点第2位で切っているので、累積に誤差が出ているかもしれません。

はい。負けてますね。それなりの期間で見て、負けています。
nが少ないので計算していませんが、リスク(標準偏差)が低いわけでもなさそうです。

これに対して、ESGアクティビストを自認されているらしいGPIFのCIO水野氏は、

「1か月の投資なら気にする必要はないが、20-30年スパンの年金運用の場合は、気候変動をリスクとして認識すべきである」
「ESG投資はアルファを求めるものでなく、システミックリスクに対応するものである」
「長期的にはリターン面でも適切な評価が反映されると信じている」

などと説明されています。(参考リンク


2つ目、3つ目の発言からすると、実際に投資を開始した直近2年でも負けてるんでしょうね。

まぁご高説はごもっともではあるのですが、自分のお金で適正な規模感でやってもらうか、本当の意味でアクティブにやってもらいたいものです。

少しずれますが、先日出ていた、株主責任を果たす意味合いから外株での貸株をやめるという話(参考リンク)も、多数の投資先企業に対して、本当に一つ一つの案件を精査して、意味のある議決権行使ができると仮定して(かなり疑わしいと思いますが)、それによる企業価値の向上に伴うリターン改善効果と、議決権行使に伴うコスト増+貸株金利の逸失を天秤にかけて、なおプラスが大きいと判断しているのであれば支持できますが、そうでないのであれば、それは一部の執行陣の自己満足ではないでしょうか。「株主の意見に従わないなら売る」という意思表示ができないパッシブ投資家の限界があると思います。
空売りを抑制するとかいうのは、道義的な意義はあるのかもしれませんが、私たち市井の民には縁遠い世界の話という気がします。

GPIFのG

Governmentではありません。Governanceについてです。

少し前のニュースですが、GPIF理事長の高橋氏が特定の女性職員と特別な関係にあって、公私混同していた”疑いがある”ということで減俸処分になったというものがありました。(日経新聞社説「GPIF理事長は襟を正せ」

その後の報道では、実際にセクハラを行っていたのは別の理事で、件の処分は水野氏も含めたGPIF内での派閥争いの一環であるという指摘もあります。(東洋経済「衝撃事実!GPIF理事長処分は謀略だった」

どっちが正しいのか、私ごときにはわかりません。
でも、どっちにしても、GPIFが”G”に課題を抱えているのは間違いないんだろうと思います。

「他人のことを言う前にまず自分のことでしょ」とは、私が子供たちによく言ってしまうセリフで、それはそのまま鋭利なブーメランとして私のもとに返ってくるのですが、うん、まぁそういうことですよ、と。

まとめ

私はセーフティネット含めた公的年金保険の役割は認識しているつもりですし、GPIFが20年弱で累積68兆円のリターンを稼いでいることも知っています。ありがとうございます。
むしろもっとアグレッシブに運用してもらいたいくらいだと思っています。

でも、敢えて大き目の声で言わせていただきます。

「ESG投資なんて、さんもじ食らえ」と。

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